良い人材が辞めない会社の作り方⑭共感編
良い人材が辞めない会社になるためには7つのポイントがあります。その一つが共感です。
会社が持続的に成長し、優秀な人材が長期的に定着するためには、社員が会社に対して深い共感を持つことが欠かせません。その中でも、特に重要なのが経営理念です。経営理念は、会社の方向性や価値観を示し、社員の行動指針となるものです。しかし、ここで注意すべき点があります。どれだけ素晴らしい経営理念を掲げていても、それが実際の行動や判断と一致していなければ、社員にとって大きな失望となり、優秀な人材の離職につながることがあります。
例えば、「顧客満足を最優先する」という経営理念を掲げている会社があったとします。しかし、実際には売上や利益を最優先し、顧客の声やニーズが後回しにされている場合、社員はその矛盾に気付きます。どれだけ理念が立派でも、日常の業務で顧客対応が疎かにされている状況では、社員は理念に対する共感を失い、会社に対しての信頼感も低下してしまいます。結果として、顧客に対して誠実に対応しようと努力する優秀な社員ほど、この矛盾に耐えられず、最終的に退職するケースが出てくるのです。
また、経営理念として「社会貢献」を掲げている会社も多いですが、その実際の取り組みが形だけのものであったり、CSR活動が名ばかりで本質的な社会貢献に繋がっていない場合、社員はそのギャップに強い不信感を抱きます。例えば、環境に配慮した企業活動を掲げているにもかかわらず、実際には環境破壊につながる行動をしているとしたら、社員はその理念を信じることができなくなります。理念が現実と矛盾することで、社会的に貢献したいと考える社員ほど、強い失望を感じ、会社を去る可能性が高まるのです。
また、「倫理と正直さを大切にする」という理念を掲げる会社においても、経営者や上司が日常的に倫理に反する行動を取っている場合、そのギャップは深刻な問題となります。例えば、取引先との交渉において不透明な取引や、不正な利益追求を黙認するような行動を取っている場合、社員はすぐにその矛盾に気付きます。特に、誠実さや倫理を重んじる社員にとっては、そのような行動が大きな失望を招き、会社に対する信頼を大きく損なう原因となります。「倫理的な企業活動を行う」との理念が表向きに掲げられていても、実際には短期的な利益を優先して不正や不透明な行動が行われていれば、社員はその矛盾を許せません。
さらに、「人としての成長を促す」という経営理念を掲げている会社もよく見られます。人材育成を重視し、社員の成長を支援することを約束する企業は魅力的に映る一方で、実際には人材育成にかけるリソースが不足していたり、社員が自主的に学び成長するための機会が提供されていない場合、社員はその理念に対する信頼を失います。たとえば、会社が社員のキャリア成長を推奨しているにもかかわらず、実際には研修や教育の機会がほとんど提供されないと、社員は「言行不一致」を感じてしまい、モチベーションを失うことが多いのです。
こうしたギャップが生じる背景には、理念と実践がかけ離れていることが原因です。社員は、経営者や上司がその理念に忠実に従っているかどうかを非常に注意深く見ています。もし、経営者が理念を掲げながらも、自分たちの行動がそれと一致していない場合、社員はすぐにその矛盾に気付き、信頼感が失われます。このような状態が続けば、社員は会社の経営理念そのものに対して失望し、共感が失われ、最終的に離職の決断をすることにつながるでしょう。
最終的には、経営理念が実際の行動と一致しているかを常に確認し、社員に対してその理念がただのスローガンではなく、実際に行動に移されていることを示すことが重要です。経営者や上司が率先して、日々の業務や判断において経営理念を基に行動する姿勢を見せることで、社員はその理念に共感し、信頼感を持って働くことができるようになります。また、理念に基づいた行動を社員全員が自然に行えるような職場文化を築くことで、優秀な人材が辞めずに定着する環境を作り上げることができるのです。